車検を受けたばかりなのに異音が発生…
「車検を受けたばかりなのに車から異音がする。」
そんな経験をすると、
「車検では点検していなかったの?」
「もっと早く見つけられなかったの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
しかし、自動車整備士として長年仕事をしてきた経験では、車検時には異常がなくても、その後わずか1か月ほどで故障が進行するケースは決して珍しくありません。
今回は実際にあった「ステアリングラックエンドのガタ」が原因となった事例をご紹介します。
実際にあった体験談
車検で入庫した古い車のお話です。
お客様から
「デコボコ道を走ると、たまにカタカタと音がする」
というご相談がありました。
まず試運転を行い、足回りを重点的に点検しました。
点検した箇所は次のとおりです。
- ショックアブソーバー
- スタビライザー
- ロアアーム
- タイロッドエンド
- ステアリングラックエンド及びタイロットエンド
- ステアリングギヤボックス取付部
しかし、どこにもガタはありませんでした。
異音も頻繁ではなく、再現性も低かったため、その時点では原因を特定できず、車検だけ実施することになりました。
ところが…
車検から約1か月後。
走行距離にすると約1,000kmほどしか走っていませんでしたが、
「今度はちょっとした段差でもカタカタ鳴る」
ということで再入庫しました。
再び点検すると、今度はステアリングラックエンドにわずかなガタを発見。
車検時には全く確認できなかったガタが、この短期間で一気に大きくなっていたのです。
ラックエンドのガタは急激に大きくなることがある
ラックエンドはボールジョイント構造になっています。
内部のグリスが劣化し、摩耗が進行すると、
ある日突然ガタが大きくなることがあります。
つまり、
- 10万kmまでは問題なし
- 10万1,000kmで急にガタが発生
ということも珍しくありません。
摩耗は少しずつ進んでいても、一定の限界を超えると一気に症状が現れることがあります。
そのため、車検時に異常がなくても、その後すぐに故障してしまうケースは実際に存在します。
ステアリングラックエンドとは?
ステアリングラックエンドは、ハンドル操作を左右のタイヤへ伝える重要な部品です。
ラックエンドの先にはタイロッドエンドが取り付けられ、最終的にナックルへ力を伝えています。
この部分にガタが発生すると、ステアリング操作に悪影響を及ぼします。
ラックエンドにガタが出たときの症状
主な症状は次のとおりです。
- 段差でカタカタ音がする
- コトコトという異音がする
- ハンドルに遊びが増える
- ハンドル操作時に違和感がある
- 直進安定性が悪くなる
- 高速道路でふらつくことがある
初期段階では異音だけの場合もありますが、ガタが大きくなるにつれて症状も悪化します。
ラックエンドのガタは車検に通る?
結論からいうと、
ガタの程度によります。
わずかな摩耗で車検基準以内であれば通ることもあります。
しかし、
- 明らかなガタ
- ハンドル操作に支障がある
- 保安基準を超えるガタ
が確認された場合は車検に合格できません。
今回のケースでは、車検時にはガタが確認できず、その後急激に悪化したため車検には問題なく合格しました。
ラックエンドのガタを放置するとどうなる?
ラックエンドは操舵装置の一部です。
そのため放置すると非常に危険です。
考えられるリスクは
- 異音が大きくなる
- ハンドル操作が不安定になる
- タイヤが偏摩耗する
- アライメントが狂う
- 最悪の場合は操縦安定性が著しく低下する
異音だけだからと放置するのはおすすめできません。
修理費用の目安
ラックエンド交換費用は車種によって異なります。
一般的な目安は以下のとおりです。
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| ラックエンド部品代 | 5,000~10,000円(片側) |
| 工賃 | 10,000~25,000円(片側) |
| サイドスリップ・アライメント調整 | 5,000~20,000円 |
| 合計 | 20,000~50,000円程度 |
車種によってはステアリングラックを一部分解する必要があり、工賃が高くなることもあります。
👉「年式の古い車、走行距離の多い車は修理費用が高額になった場合、高額な修理費用を払っても、後々また別の場所が壊れるリスクは残ります。
修理費が高額になる場合は、売却という選択肢も検討してみましょう。
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古い車は車検後すぐ故障することもある
今回のお客様も、
ラックエンド交換の見積もりをご案内したところ、
「これから他にも故障するかもしれない。」
という理由で買い替えを決断されました。
結果的には
- 車検代
- 整備費用
がほぼ無駄になってしまいました。
もちろん普通車であれば、自動車税(種別割)の未経過分や自賠責保険料、自動車重量税の一部が還付・返戻されるケースもあります。
しかし、車検整備費用そのものは戻ってきません。
古い車ほど、
- エンジン
- ミッション
- 足回り
- エアコン
など、他の部品も寿命を迎える可能性があります。
そのため、
車検を受ける前に今後2年間安心して乗れるかどうかを総合的に判断することが大切です。
車検前に買い替えも検討した方がよいケース
次のような場合は、車検だけでなく買い替えも選択肢になります。
- 走行距離が10万km以上
- 初年度登録から13年以上経過(初年度登録から13年を超えると自動車税、重量税が高くなります)
- 修理箇所が年々増えている
- 修理費が車の査定額を超える
- 今後も長く乗る予定がない
もちろん大切に整備された車であれば長く乗れることもありますが、古い車ほど予期しない故障のリスクは高くなります。
よくある質問(Q&A)
Q. ラックエンドのガタは異音だけで判断できますか?
異音だけでは断定できません。スタビライザーリンクやショックアブソーバー、ロアアームなどでも似た音が出るため、点検が必要です。
Q. 車検で異常がなければ2年間は安心ですか?
いいえ。車検はその時点で保安基準に適合しているかを確認する制度です。車検後すぐに部品が故障する可能性もあります。
Q. ラックエンド交換後はアライメント調整が必要ですか?
サイドスリップ調整は基本的に必要です。車種や作業内容によっては四輪アライメント調整を実施した方がよい場合もあります。
Q. 異音がたまにしか出ない場合でも修理した方がいいですか?
原因によります。ラックエンドなどステアリング系統が原因であれば、安全性に関わるため早めの点検・修理をおすすめします。
Q. 古い車は車検を受けるより買い替えた方がいいですか?
一概には言えませんが、高額修理が予想される場合や今後も故障が続きそうな場合は、買い替えた方が結果的に費用を抑えられるケースもあります。
まとめ
今回の事例では、車検時には異常が確認できなかったステアリングラックエンドが、わずか約1か月・約1,000kmの走行で急激に摩耗し、異音の原因となりました。
ラックエンドのようなボールジョイント部品は、ある時点を境に急激にガタが進行することがあり、車検時に問題がなくても、その後すぐに故障するケースは決して珍しくありません。
また、古い車では一つの故障をきっかけに他の部品も寿命を迎えることがあります。そのため、走行距離や年式、今後の修理費などを総合的に考え、車検を受けるか、それとも買い替えるかを慎重に判断することが大切です。
今回の体験が、同じように古い車の車検で悩んでいる方の判断材料になれば幸いです。
*もし、修理費用が高額になった場合には車を買い替えたほうがお得になることもあります。
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