車を運転していて、水温計が急に上がったり下がったりすると不安になりますよね。
「オーバーヒート寸前なのでは?」
「サーモスタットの故障?」
「ラジエター交換が必要?」
実際、水温計が不安定になる原因はいくつかあります。しかし、今回お預かりした車両では、最終的に「ヘッドガスケット抜け」が原因でした。
今回は、実際に整備士時代に経験した「アクティトラックの水温異常トラブル」について、診断の流れや修理内容、修理費用の目安まで詳しく解説します。
水温計が上がったり下がったりする症状で入庫
お客様からの依頼内容は、
「走っていると水温計が上がったり下がったりするんだよね」
というものでした。
車両は ホンダ アクティトラック、走行距離は約10万km。
まずは基本点検として冷却水の量を確認したところ、リザーバータンクの冷却水はLOWレベルぎりぎりまで減っていました。
「どこかで水漏れしているのでは?」
と思い、
- ラジエター
- ヒーターホース
- ウォーターポンプ
- ホース接続部
- ラジエターキャップ周辺
など、冷却系統を一通り点検。
しかし、外部への水漏れは確認できませんでした。
冷却水を補充して試運転すると異常発生
冷却水を規定量まで補充して試運転を実施。
最初のうちは水温計は正常位置を指していました。
しかし、しばらく走行すると徐々に水温が上昇。
最終的には水温計が赤い危険ゾーン近くまで上がってしまいました。
慌てて車を停止し、エンジンを停止。
しばらく冷ましてから再始動すると、水温計は正常位置で安定しています。
ところが、再び走行するとまた水温が上昇。
つまり、
- アイドリングでは正常
- しばらく走行すると異常発生
という症状でした。
この時点で、「単純な冷却水不足ではない」と判断しました。
水温計が上がったり下がったりする主な原因
水温計が不安定になる原因としては、主に以下が考えられます。
冷却水不足
冷却水が不足すると循環不良が発生し、水温が急上昇します。
サーモスタット不良
サーモスタットが開かなくなると、ラジエターへ冷却水が流れずオーバーヒートします。
ウォーターポンプ不良
インペラー破損や軸摩耗で冷却水が循環しなくなるケースがあります。
ラジエターの詰まり
内部腐食やスラッジによって冷却効率が低下します。
ヘッドガスケット抜け
燃焼ガスが冷却水経路へ入り込み、異常な圧力やエア噛みを起こします。
まずはサーモスタットを交換
冷却水量は正常化したので、次に疑ったのはサーモスタット不良です。
サーモスタットが正常に開かなければ、走行時に水温が上昇しやすくなります。
そこでサーモスタットを交換。
しかし、試運転すると症状は改善しませんでした。
次に疑ったのはラジエター詰まり
続いて疑ったのがラジエター内部の詰まりです。
一般的には、
- アッパーホース
- ロアーホース
の温度差を確認して診断します。
しかし、実際の現場ではこの方法だけでは判断が難しいケースも多いです。
ラジエターを取り外して水を流して確認する方法もありますが、軽度の詰まりは判断が困難。
結局のところ、
「怪しいから交換してみる」
という流れになりやすい部品でもあります。
ただし、ラジエター交換は決して安くありません。
原因が違っていた場合、ユーザーに無駄な修理費用を負担させてしまう可能性があります。
ヘッドガスケット抜けを点検
そこで先に「ヘッドガスケット抜け」を確認することにしました。
使用したのはヘッドガスケットリークテスターです。
これは、冷却水内に排気ガス(燃焼ガス)が混入しているかを確認する工具です。
点検した結果――
テスター液が青色から黄色へ変色。
この瞬間、ヘッドガスケット抜けが確定しました。
*ヘッドガスケットリークテスターとは、エンジンの排気ガスが冷却水に混入しているかどうかを特殊な液体を使って判断するテスターです。ヘッドガスケットが抜けているかどうかを確定するのは大変難しく時間もかかる作業ですが、テスターを使うことで簡単にヘッドガスケット抜けを判断できます。ヘッドガスケットリークテスターの使い方はこちらの記事で解説しています。

ヘッドガスケット抜けで水温計が不安定になる理由
ヘッドガスケットが抜けると、燃焼室の高圧ガスが冷却水経路へ流れ込みます。
すると、
- 冷却水にエアが混入
- 冷却水が正常循環しない
- ラジエターへうまく流れない
- 圧力異常が発生
といった症状が発生します。
その結果、
- 水温計が急上昇する
- 突然下がる
- オーバーヒートする
- ヒーターが効かなくなる
などの症状が出ることがあります。
特に「走行時だけ症状が出る」のは、燃焼圧力が高まるためです。
ヘッドガスケット交換修理を実施
ユーザーへ見積もりを説明し、
- シリンダーヘッド脱着
- ヘッドガスケット交換
- 冷却水交換
- ガスケット類交換
を行うことになりました。
ただし、
「シリンダーヘッドを外してみないと、内部ダメージの有無は分からない」
という点も事前に説明済みです。
実際、オーバーヒート歴があるエンジンでは、
- シリンダーヘッド歪み
- ヘッド亀裂
- ピストンダメージ
が発生している場合もあります。
幸い内部ダメージはなし
実際にシリンダーヘッドを取り外して点検したところ、
- シリンダーヘッド歪みなし
- シリンダー損傷なし
- ピストンダメージなし
という状態でした。
結果として、ヘッドガスケット交換のみで修理完了。
比較的軽症で済んだケースです。
ヘッドガスケット交換の修理費用目安
軽自動車の場合、ヘッドガスケット交換費用は一般的に以下くらいが目安です。
| 修理内容 | 費用目安 |
|---|---|
| ヘッドガスケット交換のみ | 8万〜15万円 |
| ヘッド研磨あり | 12万〜20万円 |
| エンジン載せ替えレベル | 20万〜40万円以上 |
※車種や損傷状態によって大きく変わります。
特にオーバーヒートを放置すると修理費用が一気に高額化します。
水温計異常を放置すると危険
水温計の異常を軽視すると、
- エンジン焼き付き
- シリンダーヘッド変形
- エンジン交換
に発展する可能性があります。
以下の症状がある場合は要注意です。
- 水温計が上がったり下がったりする
- 冷却水が減る
- リザーバータンクが吹き返す
- 白煙が出る
- ヒーターが効かない
- ラジエターホースが異常に硬い
早めの点検が結果的に修理費用を抑えることにつながります。
まとめ
今回のアクティトラックは、
「水温計が上がったり下がったりする」
という症状の原因が、ヘッドガスケット抜けでした。
最初はサーモスタットやラジエターも疑いましたが、最終的にはリークテスターによって原因を特定。
幸い、シリンダーヘッドやエンジン内部に大きな損傷はなく、ヘッドガスケット交換のみで修理できました。
水温異常は放置すると重大故障につながります。
特に、
- 走行時だけ水温が上がる
- 冷却水が減るのに水漏れがない
という場合は、ヘッドガスケット抜けの可能性も疑ったほうが良いでしょう。
今回はシリンダーヘッドガスケットの交換だけで済んだので良かったですが、ピストンやシリンダーのほうまでダメージがあったらエンジン載せ替えまでになってしまうので、いかに早く異常に気がついて修理に出すかが鍵になります。
もし、高額な修理費用になってしまったら、車を買い替えたほうが後々のことを考えるとお得な場合もあります。
車を買い替えるとした場合、高額な修理費用がかかる車の場合にはディーラーなどに下取りに出しても査定額は0円の場合がほとんどです。
でも、カーネクスト
などの車買い取り専門店などでは、動かない車や廃車するような車でも高額で買い取ってくれる可能性もあるので、ひとつの方法として考えてみてもいいでしょう。
エンジントラブル全般に関しての記事はこちら

