普通に走っている時は何ともないのに、信号待ちからの発進や坂道でアクセルを踏み込んだ瞬間、「ブスブスッ」「ガクガクッ」とエンジンがついてこない……。30年の現場経験の中で、最も多くのお客様からご相談を受けたのがこの症状です。
結論から言うと、この現象は「点火系(火花を飛ばす仕組み)」のトラブルが原因のことが多いです。アクセルを踏み込むと、エンジン内には大量の空気とガソリンが送り込まれ、爆発させるためにより強い火花が必要になります。しかし、点火系に不調があると強い火花が飛ばず、失火(ミスファイア)を起こして「ブスブス」という症状が出るのです。
現場で実際に多かった故障箇所を、発生頻度が高い順に3つ解説します。
加速時に「ブスブス」とエンジンがノッキングする3つの主な原因
①【最も多い】スパークプラグの摩耗・かぶり

エンジントラブルの中でダントツに多い原因が、スパークプラグの不具合です。
スパークプラグは、エンジン内でライターのように火花を飛ばす重要なパーツですが、走行距離が増えるにつれて電極が徐々に摩耗していきます。電極が減って隙間(プラグギャップ)が広くなると、高負荷がかかる加速時に火花が飛べなくなってしまいます。
- よくある症状: アイドリングは静かなのに、アクセルを踏み込んだ瞬間だけ「ブスブス」と失火する。
- 発生するタイミング: 軽自動車で3万〜5万km、普通車で5万〜10万km(イリジウムプラグ除く)を超えたあたりから一気に増えます。ガソリンがかぶりすぎて湿ってしまう「プラグかぶり」も主な原因です。
② イグニッションコイルの故障・内部リーク
スパークプラグの次に多く、近年特に増えているのがイグニッションコイルの寿命です。
イグニッションコイルは、車のバッテリー電圧(12V)を点火に必要な超高電圧(2万〜3万V)に昇圧する変圧器のような部品です。エンジンの熱や振動を常に受けているため、内部の絶縁体が劣化してショートを起こしたり、漏電(リーク)したりします。
- よくある症状: アイドリング時にエンジンが振れたり、加速時に車体が大きく揺れ、エンジン警告灯が点滅することもあります。
- 発生するタイミング: 走行距離8万〜10万km前後で突然壊れるケースが多く、「さっきまで普通に走れていたのに急におかしくなった」というお客様の多くがこのパターンです。
③ プラグコードの断線・被覆の劣化

少し年式の古いお車や、イグニッションコイルからプラグコードを経由して電圧を送るタイプの車種で多いのが、プラグコードの不具合です。
コードの内部線が断線、または断線しかけていてスパークプラグに電気が流れなかったり、外側のゴム被覆が経年劣化でヒビ割れたりすることで、高圧電流が途中で外へ逃げてしまいます(リーク現象)。
- よくある症状: エンジンがアイドリングで振れたり、雨の日や湿度の高い日、洗車をした直後に「ブスブス」と症状が悪化しやすいのが大きな特徴です。夜間にエンジンルームを覗くと、電気の火花が「バチバチ」と漏れているのが見えることもあります。
【部位別】点火系トラブルの修理費用目安と交換時期
点火系のトラブルは放置すると走行不能になるだけでなく、他の高価な部品(触媒など)を傷める原因にもなります。
ここでは、故障しやすい3つの部品「スパークプラグ」「イグニッションコイル」「プラグコード」について、交換時期の目安・修理費用の相場・現場のプロだからわかる交換時のポイントを詳しく解説します。
スパークプラグの交換費用と推奨交換走行距離
スパークプラグは点火系の中でも最も安価ですが、最も定期的な交換が必要な消耗品です。
| 項目 | 内容・金額の目安 |
| 推奨交換時期 | 普通プラグ: 3万~5万km 両針イリジウム/長寿命プラグ: 8万〜10万km ※軽自動車は回転数が高いため、上記の半分の走行距離が目安です。 |
| 部品代(1本あたり) | 1,000円 〜 2,500円程度 |
| 交換工賃(一式) | 2,000円 〜 6,000円程度(車種・エンジンレイアウトにより変動) |
| 修理費用総額(3〜4本) | 約 6,000円 〜 15,000円 |
整備士のアドバイス:
清掃(真鍮ブラッシング)で一時的に復活することもありますが、電極の摩耗自体は直らないため再発します。不調が出たら清掃ではなく**「新品への全数交換」**が基本です。また、1本だけダメになっていても、他のプラグも同じだけ疲弊しているため、必ず全気筒分をまとめて交換しましょう。
なお、スパークプラグはトラブルが起きてから焦って交換するのではなく、故障を未然に防ぐために「走行距離」を目安に予防交換しておくのがベストです。
*車によってはスパークプラグを交換するのにインテークマニホールドの脱着が必要なこともあり、そのような車は工賃だけでも1万円を超えることもあります。
「少しでも修理費を抑えたい」という方は、DIYでの交換に挑戦してみるのもおすすめです。例えば**日産デイズ(DAYZ)**などの軽自動車であれば構造もシンプルで、初心者の方でも比較的簡単に交換作業が行えます。
詳しい手順や必要な工具については、こちらの記事で分かりやすく解説しています。
👉 日産デイズのスパークプラグ交換方法 DIY初心者でも簡単!
イグニッションコイルの交換費用(全気筒同時交換をおすすめする理由)
高電圧をつくり出すイグニッションコイルは、スパークプラグよりも高価な部品になります。
| 項目 | 内容・金額の目安 |
| 推奨交換時期 | 8万 〜 10万km(または故障発生時) |
| 部品代(1本あたり) | 4,000円 〜 9,000円程度(純正品の場合) |
| 交換工賃(一式) | 3,000円 〜 8,000円程度 |
| 修理費用総額(3〜4気筒) | 約 20,000円 〜 45,000円 |
整備士のアドバイス(超重要):
「不調が出ている1本だけ交換すれば安く済むのでは?」とお問合せいただくことがよくあります。しかし、1本が寿命を迎えたということは、残りのコイルも明日壊れてもおかしくない状態です。1本ずつ壊れるたびに工賃やレッカー代を払うより、最初に全気筒分をまとめて交換する方が、結果的にコストも手間も大幅に抑えられます。
*イグニッションコイルもスパークプラグ交換と同じく、車によっては工賃だけで1万円を超えることもあります。
プラグコードの交換費用と点検方法
イグニッションコイルからプラグへ電圧を送るコード類も、定期的な点検と交換が必要です。
| 項目 | 内容・金額の目安 |
| 推奨交換時期 | 8万 〜 10万km(またはひび割れ・リーク確認時) |
| 部品代(1台分セット) | 5,000円 〜 12,000円程度 |
| 交換工賃 | 2,000円 〜 5,000円程度 |
| 修理費用総額 | 約 8,000円 〜 18,000円 |
簡易点検方法:
エンジンをかけた状態で、夜間など暗い場所でコード周辺を観察します。もし「バチバチ」と青白い火花が外に漏れている(リークしている)のが見えたり、カチカチと音が聞こえたりしたら完全に寿命です。コードは1本単位ではなく「1台分セット」での新品交換を行います。
さらに確実な点検方法(サーキットテスターでの測定):
目視だけでなく、サーキットテスターを使ってプラグコードの抵抗値を測定するのも非常に有効な方法です。
基準となる抵抗値はコードの種類によって若干異なりますが、おおむね「1kΩ〜15kΩ(キロオーム)」の範囲内であれば正常です。
私の30年の現場経験から言うと、エンジンに「ブスブス」と明確な症状が出ている場合、測定すると**抵抗値が無限大(コード内部が完全に断線している状態)**になっているケースがほとんどです。外観に大きなひび割れがなくても内部で切れていることがあるため、テスターでの計測は確実な診断につながります。
アクセルを踏み込んだ時だけ加速しない(高負荷時の点火不良)
点火系の初期トラブルで最も多いのが、「ゆっくり走っている時は普通なのに、アクセルを強く踏み込むと加速しない」という症状です。
エンジンは、アクセルを踏み込んで空気をたくさん吸い込んだ時(高負荷時)ほど、スパークプラグが火花を飛ばしにくくなる性質があります。点火系の性能が落ちていると、この「アクセルを踏み込んだ瞬間」に火花が届かなくなり、ミスファイア(失火)を起こして「ブスブスッ」とエンジンがノッキングします。
- 典型的なシチュエーション:
- 信号待ちからの発進時
- 高速道路の合流や追い越し時
- 上り坂にかかってアクセルを踏み増した時
アイドリング時にエンジンが振動する・止まりそうになる
点火系の劣化が進むと、加速時だけでなくアイドリング状態にも症状があらわれます。
1つの気筒(シリンダー)がうまく爆発しない状態になると、エンジンの回転バランスが著しく崩れます。
- 主な症状:
- 信号待ちの最中、車体全体が「ガタガタ」「ブルブル」と大きく揺れる
- マフラーからの排気音が「ポッポッポッ」と断続的な音になる
- エアコンを入れた瞬間にエンジンの回転数が落ち込み、エンスト(エンジン停止)しそうになる
エンジン警告灯が点滅・点灯する理由

点火不良が発生すると、メーターパネル内にある「エンジン警告灯(チェックランプ)」が点灯、または点滅する時もあります。
現在の車はコンピューターが常に監視を行っており、どこかの気筒で連続してミスファイアを検知すると、運転手に異常を知らせる仕組みになっています。(状況によってはエンジン警告灯が点灯、点滅しないこともあります)
警告灯が「点滅」している場合は超危険:
警告灯がピカピカと点滅している状態は、非常に強い失火が起きているサインです。未燃焼のガソリンが排気管へ流れて二次被害を引き起こすリスクが高いため、ただちに安全な場所に車を止め、走行を控えましょう。
点火系トラブルセルフ診断チェックリスト
以下の項目に2つ以上当てはまる場合、スパークプラグやイグニッションコイルなどの点火系パーツが限界を迎えている可能性が極めて高いです。
- アクセルを踏み込むと「ブスブス」といってスピードが出ない
- アイドリング中に車体がいつもより大きくガタガタ揺れる
- 雨の日や湿度の高い日にだけエンジンの調子が悪くなる
- 上り坂でスピードが落ち、アクセルを踏んでも反応が鈍い メーターのエンジン警告灯が点灯・または点滅している
- 前回のスパークプラグ交換から3万km(またはイグニッションコイルから8万km)以上走っている
突然エンジン不調になった時の応急対処法と注意点
「さっきまで何事もなく普通に走っていたのに、突然『ブスブス』と音がして車が加速しなくなった……」
点火系のトラブルは予兆なく一瞬で発生することが多いため、突然の不調に焦ってしまうドライバーも少なくありません。もし走行中にこの症状が出た場合、二次被害を防ぐために取るべき応急処置と絶対にしてはいけない注意点を解説します。
そのまま走り続けると危険!触媒(キャタライザー)破損のリスク
エンジンが「ブスブス」といって失火している状態のまま無理に走り続けるのは非常に危険です。
スパークプラグやイグニッションコイルの不調で火花が飛んでいない気筒からは、爆発しなかった生ガソリン(未燃焼ガス)がそのまま排気管へ排出されてしまいます。
二次被害(触媒の溶損・火災リスク)
排気管の途中には、排気ガスをクリーンにする「触媒(キャタライザー)」という高価なパーツが装着されています。生ガソリンがそのまま触媒に到達すると、高温になった触媒内部でガソリンが再燃焼し、1,000℃以上の超高温になって内部の貴金属が溶けてしまいます(溶損)。最悪の場合、車両火災に繋がる恐れもあります。
修理費用が跳ね上がる
スパークプラグやコイルの交換だけで済めば数万円で治ったはずが、触媒まで壊してしまうと追加で10万円〜20万円以上の高額な修理費用がかかってしまいます。
*修理費用が高額になる場合は、カーネクスト
の買取サービスを利用するという選択肢もあります。
ロードサービスを呼ぶべき判断基準
「自力で整備工場まで走れるか」「ロードサービスを呼ぶべきか」の判断基準は以下の通りです。
エンジン警告灯が「点滅」している場合
⇒ 即座に安全な場所へ停車し、レッカーを呼んでください。 深刻な失火が続いており、触媒が壊れる寸前です。無理な走行は厳禁です。
エンジン警告灯が「点滅ではなく点灯」で、微加速ができる場合
⇒ 近くに整備工場やカー用品店(数百m〜数km以内)があれば、ハザードを点灯させて低速で移動することは可能です。ただし、高速道路や長距離の走行は避けましょう。
※加入している任意保険のロードサービス特約やJAFを利用すれば、多くの場合は無料で最寄りの整備工場まで搬送してもらえます。迷ったら無理せずレッカーを依頼するのが賢明です。
整備工場へスムーズに症状を伝えるためのメモポイント
工場へ到着した際、または電話で状況を伝える際、以下のポイントを整備士に伝えていただけると故障診断のスピードが劇的に上がり、工賃の削減にもつながります。
- 発生したシチュエーション: (例:信号待ちからの発進時、上り坂での加速時、雨の日など)
- 症状の出方: (例:アクセルを踏んだ時だけブスブスいう、アイドリング中も車体がガタガタ揺れるなど)
- メーターの表示: (例:エンジン警告灯が点滅していた、または点灯したままなど)
- 前回のメンテナンス履歴: (例:プラグやコイルをいつ交換したか覚えている範囲で)
まとめ:加速不良を感じたら早めの点検・修理を!
走っている最中に突然エンジンが「ブスブス」といって加速しなくなると不安になりますが、その原因の多くはスパークプラグやイグニッションコイルといった「点火系」の不調によるものですが、燃料系のトラブルでも起こりえることです。なので、点火系の点検で異常が見当たらない場合には燃料系も疑ってみることが必要です。
燃料系のトラブルに関しては燃料ポンプ故障の前兆と症状5選|トラブル予防策と緊急時の対処法までプロが解説の記事で詳しく解説しています。
点火系トラブルの重要ポイントを改めて整理します。
- 主な原因: スパークプラグの摩耗、イグニッションコイルの寿命、プラグコードのリーク
- 交換のコツ: 1箇所だけ壊れても、他の気筒も寿命が近いため全気筒分のセット交換が基本
- 走行時の注意: 警告灯が点滅している時は無理に走らず、触媒の破損を防ぐためロードサービスを利用する
「最近ちょっと加速が重いな」「坂道でガクガクするかも」と感じたら、それは点火系からのSOSサインかもしれません。完全に動かなくなって余計な修理費がかさむ前に、お近くの整備工場やディーラーで早めの点検を受けましょう。
👉車の修理で高額な費用がかかる場合は、思い切って買い替えを検討するのも一つの方法です。
年式が古い車や走行距離が多い車は、修理を繰り返すよりも買い替えたほうが、結果的に費用を抑えられるケースも少なくありません。
「修理するべきか、それとも買い替えるべきか迷っている」という方は、まず現在の愛車の価値を確認してみるのがおすすめです。
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修理費と比較するためにも、まずは無料査定で現在の買取価格を確認してみましょう。
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