私は約30年、自動車整備士として点検・整備に携わり、指定工場では自動車検査員として車検の最終検査も担当していました。
車検ではサイドブレーキ(パーキングブレーキ)の制動力をテスターで測定しますが、整備を終えていても基準値に達せず不合格になる車は意外と少なくありません。
サイドブレーキが効かない原因は、ワイヤーの不具合だけではなく、ブレーキシューの摩耗やキャリパー固着、オイル漏れなどさまざまです。
この記事では、
- サイドブレーキが効かない原因
- 車検に通る基準
- 修理費用の目安
- 放置する危険性
について、元自動車検査員の経験をもとに詳しく解説します。
サイドブレーキが効かない主な原因
1、サイドブレーキワイヤーの不具合
サイドブレーキは運転席のブレーキレバー(足踏み式の場合はペダル)を引いたり押したりすることでワイヤーが引っ張られてサイドブレーキを作動させます。
ワイヤーが伸びたり固着したりしてしまうとサイドブレーキが甘くなったり、全然効かなくなってしまいます。
サイドブレーキのワイヤーは、運転席から1本のワイヤーが後ろまで延びていて、途中から左右に分かれる構造になっているものと、最初から2本になっているものがあります。
どちらにしても、ワイヤーに原因がある場合は交換するしかありません。
ワイヤーが原因と思われる場合には、リヤブレーキに繋がっているワイヤーのブレーキに近い部分を手で引っ張ってみてブレーキがロックするかどうかで確認できます。
この時にブレーキがロックすればワイヤーが原因ということになり、ロックしなければ他の部分に原因があるということになります。
2、ブレーキシューの摩耗
ブレーキシューが摩耗するとドラムとシューの隙間が多くなるのでサイドブレーキの引きしろが多くなり効きが甘くなります。
現在の車のドラムブレーキはオートアジャスターのおかげである程度は調整されるので、サイドブレーキが全く効かなくなるということは無いですが、甘くなった場合には手動でも調整してやる必要があります。
ブレーキシューが摩耗すると、フットブレーキのペダルを踏んだ時にペダルの踏みしろが少し多くなるので、サイドブレーキをきちんと調整することでペダルの踏みしろが元に戻ります。
3、オートアジャスターの固着
オートアジャスターが固着してしまうと、ブレーキの調整が自動で行われません。なので、ブレーキが摩耗するとブレーキシューとブレーキドラムの隙間が多くなったままになり、サイドブレーキが甘くなってしまいます。
4、ドラム内部へのオイル漏れ
ブレーキのホイールシリンダーなどがオイル漏れを起こしていると、ブレーキオイルがブレーキシューに付着してしまい、サイドブレーキの効きが悪くなってしまいます。
又、車によっては(軽トラックなど)デフオイルがリヤシャフトのオイルシール不良によりブレーキシューに付着してしまうこともあります。
5、キャリパー固着(リアディスク)
リヤブレーキがディスクの場合には、リヤキャリパーのカムレバーの部分が固着してサイドブレーキが効かなくなってしまうこともあります。(車種によってはディスクとは別にサイドブレーキ専用のドラムを併用していることもある)
キャリパーの固着の場合にはキャリパーのオーバーホールが必要で、シリンダーの部分だけではなく、裏側のカムレバーの分解が必要なので時間がかかることが多く、それゆえに工賃も高くなってしまいます。
6、サイドブレーキレバーの故障
サイドブレーキレバーのギヤ部分の破損などが理由で、サイドブレーキレバーを引いてもサイドブレーキワイヤーを引っ張れないこともあります。
7、ブレーキライニングの剥離
ブレーキライニングが剥がれたりしてしまうと、当然サイドブレーキは効かなくなってしまいますし、ブレーキも効かなくなってしまいます。
8、サイドブレーキの調整不良
ブレーキシュー交換とかでリヤブレーキを分解した場合には必ず調整をしてやらなければなりません。オートアジャスターがついているのである程度までは調整されますが、そこから先の細かい調整は手動で行う必要があります。
で、その時に注意したいのが調整の順序です。
サイドブレーキが甘く感じるからといって運転席のレバーのほうを先に調整してしまうと、リヤドラムの調整を後からした場合にサイドブレーキレバーの引きしろがきつくなってしまい、レバーをきちんと引けなくなって、結果的にサイドブレーキの効きが悪くなってしまいます。
ワイヤーの調整はブレーキ調整をした後に行うのが基本です。
9、サイドブレーキが電気式の場合
近年ではサイドブレーキが電気式の車も増えています。
電気式のサイドブレーキが効かない場合の原因としては、アクチュエーター、モーター、電気配線、スイッチ、センサー、コンピューターなどのさまざまな原因が考えられます。
10、サイドブレーキが片側しか効かない場合
サイドブレーキが片側しか効かない場合は、ワイヤー、ドラム内のオイル漏れなどの原因が多いです。(今までの経験上)
サイドブレーキが効かないと車検に通る?
車検ではサイドブレーキの制動力を専用テスターで測定します。
左右の制動力が基準値以上あり、左右差も基準内であることが必要です。
私が自動車検査員をしていた頃も、
- 左しか効かない
- 右だけ弱い
- 引きしろが多すぎる
という理由で不合格になるケースを何度も経験しました。
サイドブレーキが甘いままでは車検には合格できません。
サイドブレーキ修理の費用目安
| 故障原因 | 修理費用 |
|---|---|
| ワイヤー調整 | 3,000〜8,000円 |
| ワイヤー交換 | 15,000〜40,000円 |
| ブレーキシュー交換 | 10,000〜25,000円 |
| ホイールシリンダー交換 | 15,000〜35,000円 |
| オートアジャスター清掃 | 8,000〜20,000円 |
| リアキャリパーOH | 20,000〜50,000円 |
| キャリパー交換 | 40,000〜80,000円 |
| 電動パーキング修理 | 30,000〜100,000円以上 |
※車種や部品代によって変わります。
修理費用は、
- 軽自動車
- 普通車
- 輸入車
でかなり違います。
特に電動パーキングブレーキはアクチュエーター交換になると10万円を超えることも珍しくありません。
👉「年式の古い車、走行距離の多い車は修理費用が高額になった場合、高額な修理費用を払っても、後々また別の場所が壊れるリスクは残ります。
修理費が高額になる場合は、売却という選択肢も検討してみましょう。
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サイドブレーキが効かないまま走っても大丈夫?
サイドブレーキが効かないままでいると、平地でもちょっとしたことで車が動き出してしまう恐れがあります。
特に、坂道などでは普通に動いてしまうので、ぶつかってしまったりすると他人に損害を与える可能性もあります。
オートマチック車の場合はPレンジに入れておけば大丈夫なのでは、と思う方もいるかも知れませんが、Pレンジは補助的なものでちょっとした衝撃でPレンジのロック部分が破損してしまうこともあります。そうなってしまうとミッションを交換しなければならなくなってしまうこともあるので高額な修理費用がかかってしまいます。
又、車検も受かりません。
そのようなことがないようにサイドブレーキはしっかりとかけておくことが大事なので、効かない時には早急に直すことが必要です。
自分で確認できるポイント
レバーがいつもより高く上がる、 カチカチ音が増えた、 坂道で動く、 左右どちらかだけ効かない、 異音がするなどに気がついたらサイドブレーキのトラブルを疑いましょう。
Q&A追加
Q. サイドブレーキが効かなくても走れますか?
走ること自体はできますが、安全性が大きく低下します。駐車中に車が動き出す危険があり、早めの点検・修理をおすすめします。
Q. サイドブレーキが片側しか効かない原因は?
サイドブレーキワイヤーの固着、ブレーキシューの摩耗、ホイールシリンダーのオイル漏れ、キャリパーの固着などが考えられます。
Q. 車検には通りますか?
十分な制動力が得られない場合は車検に合格できません。
*車検時にはブレーキテスターで制動力を測ります。その時に規定の数値に達しないと車検は受かりません。
Q. サイドブレーキ調整だけで直りますか?
ワイヤーの伸びや調整不足であれば改善することがあります。しかし部品が摩耗・固着している場合は交換やオーバーホールが必要です。
Q. 修理費用はいくらくらいですか?
簡単な調整なら数千円程度ですが、ワイヤー交換やキャリパー修理では数万円かかる場合があります。
まとめ
サイドブレーキが効かない原因には、ワイヤーの伸びや固着、ブレーキシューの摩耗、オートアジャスターの不具合、オイル漏れ、リアキャリパーの固着などさまざまなものがあります。
特に車検ではサイドブレーキの制動力が厳しく測定されるため、効きが悪い状態では車検に合格できない可能性があります。
また、サイドブレーキが効かないまま使用すると、駐車中に車が動き出して事故につながる危険もあります。
レバーの引きしろが増えた、坂道で車が動く、左右どちらかしか効かないなどの症状がある場合は、早めに点検・修理を受けることが大切です。
*もし、修理費用が高額になった場合には車を買い替えたほうがお得になることもあります。
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