こんにちは。今回は、整備士時代に遭遇した「古い車ならではの連鎖トラブル」についてお話しします。
ターゲットとなる車は、ホンダ レジェンド(型式:KA7)。 年式も古く、総走行距離はすでに10万kmを超えている個体です。
最初は「水温計が上がってしまう」というオーバーヒート症状でのご入庫でした。一見するとよくある水回りトラブルに思えましたが、点検を進めていくと、ヘッドガスケットの抜け、さらには車検整備中にABSユニットの思わぬ不具合まで発覚し、非常に苦労した1台です。
- 水温が上がる原因はどこにあったのか?
- 旧車の重整備において、お客様への「事前説明」がなぜ重要なのか?
- ABS内部部品トラブルをどう乗り越えたのか?
旧車や過走行車に乗られている方、あるいはこれから古い車を買おうと検討している方にとって、維持費やトラブル発生時のリアルな参考になるかと思います。ぜひ最後までご覧ください。
終わらない水温上昇と、恐怖の「黄色い液体」
まずは定番のサーモスタットを疑い、取り外して単体点検を実施。お湯に浸して徐々に温度を上げて弁の開き具合を確認したところ、規定温度に達しても弁が開かず、不良であることが確定しました。
これで直るだろうと新品に交換して試運転に出たものの、無情にも水温計の針は再び上昇を始めます。
サーモスタットが原因だったのは明らかなのですが、それでも直らないということは、エンジン本体にまでダメージが及んでいる可能性が高いということです。 「まさか、ヘッドガスケットが抜けているのでは……?」 嫌な予感を抱えながら、ヘッドガスケットリークテスターを使用して冷却水を点検しました。
結果は、見事に液が黄色へと変色。 このテスターは、冷却水にエンジンの排気ガスが混入していると、化学反応で青色から黄色に変わる仕組みです。つまり、「ヘッドガスケットの抜け」が確定した瞬間でした。
ヘッドガスケットリークテスターの詳細はこちらの記事で解説しています。
↓
ヘッドガスケットが抜けた時の見極め方|症状チェックと放置リスクを元整備士が解説


V6エンジンの重作業と、事前説明の重要性
ここからヘッドガスケット交換の重作業となりますが、エンジンのダメージがどこまで及んでいるかは、実際にシリンダーヘッドを外してみないとわかりません。
しかもレジェンドはV6エンジンなので、シリンダーヘッドは2つ。一般的な直列6気筒エンジンと比べても、作業時間と修理費用が跳ね上がります。もし、シリンダーヘッドの歪みや、シリンダー・ピストン本体にまでダメージがあった場合は、さらなる莫大な追加費用がかかってしまいます。
実は、この段階での「事前説明」が実務において非常に重要です。後から追加作業が発生した際のトラブルを防ぐため、最悪のケースも含めてお客様に状況を説明し、しっかりとご了承をいただいてから作業に取り掛かりました。
結果的に、シリンダーヘッドやピストンには大きなダメージがなく、ガスケットの交換のみで無事に修理を終えることができました。

車検で起きた「第2のトラブル」
時期的に車検も近かったため、そのまま継続車検もご依頼いただきました。 特別な交換部品もなく、順調に終わるかと思いきや……ここで思わぬトラブルが発生します。
ブレーキフルードの交換後、ブレーキペダルが奥までフカフカと入ってしまうのです。 明らかにライン内にエアが混入している症状でした。「交換時にエアが入るはずはないのに……」と首を傾げつつ、何度もエア抜き作業を繰り返しましたが、結果は変わらず。
レジェンドのABSユニットは、エアが噛んだ場合に修理書の通りに特殊なエア抜きを行う必要がありますが、それを行っても改善しません。 そこで、ABSユニット本体から直接エアを抜いてみることにしました。
20万円のABSアッセンブリーと、意地の分解修理

ABSユニットには独立してブレーキパイプが繋がる4つのピストンがあります。接続部を緩めて1箇所ずつ確認すると、3箇所は勢いよくフルードが出るのに、1箇所だけ全く出てきません。
原因はこれだと確信し、ピストン部分を分解してみると、その1箇所のゴムのピストンカップだけが完全にへたっていました。
ピストンカップを交換してエア抜きをしたら、今度は勢いよくブレーキフルードが出て無事エア抜きを完了しました。
ちなみに、今回のレジェンドのABSユニットはピストン部分が外に飛び出ているタイプで、ピストン部分だけを外せるのでユニット本体を全部分解する必要は無くて、作業的にはそれほど苦労しませんでした。
ピストン部分が本体内部に埋め込まれているタイプなら分解はしませんでした。
※注意 ABSユニットの分解修理は、メーカー非推奨の極めてイレギュラーな対応です。本記事は当時の緊急措置的な体験談であり、安全に関わる重要保安部品のため、同様の作業を推奨するものではありません。
まとめ:古い車との付き合い方
当初は「水温計が上がる」という症状での入庫でしたが、蓋を開けてみればヘッドガスケット交換、車検整備、そしてブレーキトラブルの修理と、予想を遥かに超える苦労の連続でした。
年式の古い車や過走行車の場合、どこを直しても、また別の箇所から予期せぬトラブルが連鎖して発生することが少なくありません。 修理費用の総額や、今後の維持にかかる労力を冷静に天秤にかけると、「車検を受けずに新しい車へ買い替える」という選択のほうが、結果的にお得になることも多々あるのだと、改めて痛感させられた一台でした。
このような古い車で修理しなければ走れない車の場合には、車を下取りに出しても0円の場合がほとんどです。それならばカーネクスト
などの車買い取り専門店で買い取ってもらえば高額で売れる可能性も高いです。
少しでも買い替えの足しにしたいと思っている方は試しに査定してもらうのもいいかも知れません。

